1月1日、天皇杯。1月8日、全国高校サッカー選手権。そして本日1月14日、全日本大学サッカー選手権。3週間に渡った国立決戦も残すところ1試合となった。ところが、この全日本大学サッカー選手権、驚くほど注目度が低い。
それを裏付けることとして、天皇杯、全国高校サッカー選手権は共に民放で放送されたにもかかわらず、全日本大学サッカー選手権は民放でライブでは放送されない(深夜には放送される)。古くは井原、中山、名波ら後の日本代表の中心を担う人物を輩出し、最近では坪井、中村憲、巻なども大学で力をつけ、日本代表にまで登り詰めた。大卒プレイヤーが現在に至るまで日本のサッカーを引っ張ってきた存在であるという意味でも、非常に意義のある大会であると言える。 そうはいっても民放で中継されていないのではどうしようもないので、実際に国立へ足を運んでみることにした。注目度もさしてないので、比較的楽に観戦できると思ったからだ。 しかし、その目論見はもろくも崩れ去った。入場者数は1万人を少し超えるくらいだったが、ゴール裏、メインスタンドを開放しておらず、バックスタンドも下段は学校関係者の席でびっしり埋まっていた。それでも上段はまだ席があったので、上段に座ることにした。大々的な告知を行なっていなかったにもかかわらず(行なっていたとしたらそれを私が知らなかっただけだが)これだけの人数がスタジアムに足を運んだことが1つの驚きだった。 大学サッカーについては正直あまり知らなかったので、試合前に配られた「展望」というタイトルの1枚の用紙が非常に役に立った。巻、原、兵藤など既にJのクラブから内定をもらっている選手やワールドユースに出場した選手は知っていたが、良く目を通してみると、前述の3人をはじめ、渡邊、松橋、鈴木など4年前の全国高校選手権決勝・市立船橋vs国見に出場したメンバーが4年の時を経てライバルからチームメイト、チームメイトからライバルへと姿を変えていた。 高校日本一を目指した国立から4年、今度は大学日本一を目指した戦いが始まった。3連覇に挑む駒沢は4-4-2のシステムで菊地がフォアリベロのようなポジションを取り、4バック+1というようなシステムだった。対する早稲田は3-5-2のシステムでボランチの鈴木が低い位置から試合を組み立て、細かいパスをつないで崩していくというスタイルで、ワールドユースの出場経験もあるトップ下の兵藤が攻撃のキーマンになっている。 試合開始から僅か6分、私が背番号と予想スタメンの欄を頼りに選手を探すのに四苦八苦している間に先制点が駒沢に入った。セットプレーからの混戦のこぼれ球が巻の前に転がり、これを巻が押し込んだ。この日は兄であるジェフ千葉の巻誠一郎が来ていたらしいが、決勝という舞台、そして兄の前で今大会自身初となるゴールを決めてみせるあたりは大したものである。 早くも劣勢に立たされてしまった早稲田は得意のパスワークで崩していきたいところだったが、駒沢の前からのプレスにフリーでボールを持つこともままならず、時折見せる鈴木からの鋭いパスやセットプレーが攻撃の拠り所になっていた。また空中戦でほとんどといっていいほど勝つことが出来ず、攻撃のキーマン・兵藤も効果的な役割を果たすことができずにいた。 そんな中、追加点が34分に生まれた。塚本のCKに巻がGKが触る前に飛び込み、頭で今日2得点目となるゴールを決めた。前半を終えて2-0。駒沢にとっては願ってもない展開となった。 ハーフタイム時には青山学院大学のチアリーディングが試合に華を添え、後半の選手入場時には駒沢の応援団が「PRIDE OF KOMAZAWA」の横断幕を掲げた。またこの日の両校の応援スタイルは対照的で、楽器は太鼓のみで男の野太い声が響く駒沢と、手拍子をベースにトランペットも使用し、黄色い声援も入り混じる早稲田の違いもまた試合を構成する要素として興味深いものだった。 エンドが変わった後半、あまりにもあっさりとした形で駒沢に3点目が入った。後半開始から僅か1分、ロングボールを落としたところに前半から左サイドを抜群のスピードでかき回していた田谷が抜け出し左サイドを突破するとファーサイドへクロスを送り、2列目から飛び出してきた小林が頭で合わせた。 3点差をつけられ、優勝の可能性がどんどんと遠のいていった早稲田も意地を見せる。51分、スローイン時に駒沢に生まれた一瞬の隙を突いて兵藤が抜け出すと、中へと切れ込み最後は難しい角度から右足のインサイドでゴールを決めた。その後の時間帯は早稲田が支配し、細かいパスワークから駒沢ゴール近くまで崩すシーンも何度かあった。しかし、フィニッシュまでには至らず、なかなか次の1点が生まれない。刻々と時間は過ぎていき、大榎監督もピッチの外に出たボールを自ら取りに行くなど、一刻も早いプレーの再開を選手に促していた。 早稲田になかなか生まれなかった次の1点は、思わぬ形で駒沢に転がり込んだ。67分、またしてもセットプレーから最後は早稲田のオウンゴールで4-1とし、試合をほぼ決着付けた。駒沢はその後も途中出場の竹内が2得点を挙げ、終わって見れば6-1の圧勝だった。 試合が終わり、続々と観客がスタジアムを後にしていったが、私は寒さに震える足を揺り動かしながらメインスタンドで行なわれる表彰式を見た。 そこで目に留まったのが、誇らしげにカップを掲げ歓喜に酔いしれる駒沢の選手をメインスタンド前列、つまり下から見上げる早稲田の選手の姿だった。さらに表彰式と合わせて発表されたこの試合のポジション別の優秀選手が再び上段に立ち、拳を突き上げるのを尻目に、早稲田から唯一ノミネートされた兵藤がその拳を突き上げることはなかった。そして上段にいた時には兵藤の首に掛けられていた準優勝メダルは、下段に下りてきた時には兵藤の首には掛けられていなかった。 ここまで鮮やかな勝者と敗者のコントラストを見たのは、これが初めてだった。最後に私見を言わせてもらうと、兵藤のプレーが優秀選手に値することは間違いないが、あの場所に立たされた兵藤の気持ちを慮ると、あの表彰式には配慮が欠けていたように思う。両校とも死力を尽くした戦いだっただけに、少し残念だった。 <編集タハラ>
by copamagazine
| 2007-01-14 22:05
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