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横浜FCvs徳島ヴォルティス観戦記

スタジアムに到着し、全体を見渡すと、横浜のチームカラーである青色のビブスを着たサポーターの姿が目に付く。そして選手入場時、サポーターが青いメッセージペーパーを掲げると、その青はさらに力強さを増し、スタジアム一体が青色に染められていく。「青で蹴りをつける。」そう銘打った今回の試みは、大成功に終わったようだ。

さらにスタジアムを見渡すと、「今こそ初心に 俺達は挑戦者 さあ行こう失うものは何もない」の横断幕が。横浜駅から三ツ沢球技場に向かうバスからも同じような横断幕が見えるのだが、横浜FCの横断幕のセンスには目を見張るものがある。

試合開始のキックオフが告げられる直前、私達の目に懐かしい光景が蘇る。今シーズン限りでの引退を表明した城とカズがボールに互いの掌を当て、ボールに祈りを捧げたのだ。その瞬間、フランスワールドカップ・最終予選が脳内をフラッシュバックする。思えば、カズはワールドカップのピッチに足を踏み入れる前にメンバーから外され、城はグループリーグ敗退の戦犯として空港で水をかけられた。その屈辱を、J1昇格という形を残すことによって晴らすことが出来るだろうか。いざ、キックオフ──

立ち上がりから試合のペースを握ったのは、大方の予想に反して、アウェーの徳島だった。「攻撃に関しては、かなりスペースがあった」と小山が語ったように、右サイドから起点を作り、そこに玉乃が積極的に絡んでいく。さらに片岡、小林といった選手達もそれに連動して動くことによって連動性に溢れる攻撃を作り出していた。またディフェンス面においても横浜のキーマン・山口に対して小山がマークにつくことでほとんど仕事をさせず、試合の流れを完全に掌握した。

山口を抑えられた横浜は、山口を飛ばして城をターゲットにロングボールを多用するが、なかなか上手く収まらない。上手く収まったとしても後方からの押し上げが少なく、ツートップが前線で孤立してしまう場面が目立った。決定機が全くなかった訳ではなかったがいずれも単発的なものであり、サイドから崩すという横浜本来の形が前半はほとんど見られなかった。

横浜にとっては嫌な流れのまま後半を迎えたが、カズのワンプレーがチームに流れる嫌な流れを払拭する。左サイドでカズがボールを受けると、個人技でディフェンスを振り切り、フリーの城へ。城のシュートはクロスバーを遥かに越えてしまったが、このプレー以降、横浜の動きが活性化されていく。後半12分にカズはベンチに下がってしまうが、ワンプレーで流れを変える能力は今もって健在である。

その後、横浜が試合のペースを握る。8分には城が抜け出し最終的に1対1の状況を迎えるが決めきれず、11分にはチョン・ヨンデがセットプレーからヘディングシュート、そして16分にアレモンがゴールネットを揺らすが、これはオフサイドの判定。19分には城が絶妙なトラップからボレーを放つが、徳島のGK島津の好セーブに阻まれる。この試合最大のチャンスとも言えた20分、カウンターで2対2の状況を作り城からアレモンへスルーパス。アレモンが倒されるがこれはノーファウル。普段冷静な高木監督が珍しくベンチを飛び出すほどの微妙な判定だった。

何とかこの劣勢を打開したい徳島だったが、前半見られた攻撃の連動性がほとんど見られず、前線と中盤の距離が開き出してしまう。それでも要所要所でのプレスはしっかりと効いていて、ディフェンスをサボる選手は決していなかった。

こうなってくると攻める横浜、守る徳島という構図が明確になってくる。実際、徳島は守備時には前線に2人だけを残してそれ以外は皆ディフェンスに奔走した。しかし、横浜は前線に残った2人に対して4人が自陣に残ってしまう場面が見られたように、リスクを冒して点を取る姿勢が足りなかった。

そして、試合はこのまま0-0のスコアレスドローで終了。試合後ガックリと肩を落とす横浜の選手に対して、すべてを出し切った徳島の選手がピッチに倒れこんだり膝に手をついて困憊しきった体を支える姿が印象的だった。

「アウェーにも関わらず、遠いところ応援に駆け付けてくれたサポーターの皆さんには感謝したい」と試合後の会見で開口一番東監督は語った。そして、選手達はサポーターのために首位を走る横浜相手に最後まで走り抜いた。今シーズンは残念ながら最下位が確定してしまったが、来年につながる1戦となった。

試合後、今シーズン限りでの引退を表明した城彰二がサポーターへメッセージを送るためにマイクを握ると、スタジアム全体から鳴り止むことのない「城彰二!」コールが起こった。アウェーの徳島のサポーターからも「城彰二!」コールは起きていた。そして城は「死ぬ気で頑張る。J2で優勝してJ1に上がりたい」と語った。フランスワールドカップで生き地獄を味わった男は、ラスト・ダンスを飾ることが出来るだろうか。残り2試合、J2から目が離せない。


                                                  <編集タハラ>
by copamagazine | 2006-11-23 21:37 | 『J』 league
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