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イラクが見せた希望~アジアカップ決勝

立ち上がりから積極的に攻めに出るイラクに対し、
中盤でのインターセプトから手数をかけずに逆襲を狙うサウジアラビア。
お互いに高い個人技をもつ選手を多く抱えているだけあり、
テクニックとスピードに溢れた攻めが数多く、「エレガント」とは対極にある、
ボクシングの打ち合いを想起させるような目の離せない息詰まる展開に。

とは言え、この試合でやはり目についたのはイラクの充実ぶり。
前半20分に10番の選手が見せた、まるでかつての中山雅史を思い起こさせるような、
ゴールラインを割ろうとした味方のパスにスライディングで追いつきクロスにまで
持っていったプレーに象徴されるように、今日の試合にかける意気込みがプレーの随所に。
ルーズボールに対する素早い出足からサウジアラビアのお株を奪うような速攻、
積極的なミドルシュート、粘り強い守備。試合終了間際になっても、
いわゆる中東らしい悪質な時間稼ぎをすることも無く最後までサウジアラビアの攻撃を
実直に跳ね返し、さらには前へ前へとボールを運ぶ姿勢を貫き通した彼らは
まさに今大会の勝者にふさわしいグッドチーム。

「イラク国民に希望を」
政情不安に悩まされる国民を勇気付けよう、これがイラク選手たちのモチベーション。
決勝の舞台での勇敢な戦いぶり、最後まで誠実な姿勢を貫き通す様子は
国民すべてに勇気を与えられたはず。

球際の強さ、前へ前へとボールを運びシュートまで持っていくスピードの速さ、
1対1での場面での仕掛ける意識の高さ。決勝に残った2チームが持ち合わせていて、
今大会の日本が残念ながら持ち合わせていなかった要素。
更にはイラクがより強く持っていた、勝利への渇望。
果たして今大会の日本が今日のイラクと対戦して拮抗した戦いを見せることができた?

明確な組織的戦術基盤が無く、個々の技術と「火事場のバカ力」的な精神力で勝利を
積み上げて来たジーコのチームに比べ、とかく組織論・戦術論がクローズアップされがちな
オシム率いる日本代表。
今大会で垣間見ることのできた、今後の日本代表の戦術的基軸となる素地に、
「個」と「精神力」の積み上げで更なる進化を!
# by copamagazine | 2007-07-30 01:01 | World!

3連覇ならず…。足りないものは?

何かが起こるのがアジアカップ。
悪い意味で中東らしい、不誠実な姿勢を見せるチームに成果は与えられるべきではない。
奇跡を見せた前回大会の経験者も数多くいる今回のチームもまた、何かを見せてくれるはず。

そう思いながら、最後のコーナーキックまで固唾を呑んで見守ったものの、1点差で3連覇の夢は散ることに。

この試合で感じたのは、この1年間とみに聞くことが少なくなった気のする、「個」の差。

優れた個を集めて世界に挑み、その差に敗れたジーコジャパン。
幻想を捨て「日本サッカーを日本化する」の言葉のもと、個の力の差を克服し、組織の力で世界との差を埋めるべく取り組んできたオシムジャパンのこの1年。
このアジアカップでも、確かに組織力を武器にした日本人らしいサッカーを垣間見ることはできた。
しかし準決勝の舞台で、個の力でこじ開けられた1点の差でアジアの壁に泣くというのは、ある種の矛盾を表しているようでとても興味深く、今後の3年間を占う上でのターニングポイントとなる気が。

高原の充実ぶりや今日の試合を見ても分かるように、決して決定力が無いわけではない。
お決まりの「決定力不足」という言葉で単純に片付けるには少し違和感のある、今回の結果。
何が足りない?

・スペシャリスト不在
1対1の場面で勝負を仕掛けられる選手の少なさ。
交代出場の選手もポリバレントな選手が多く、例えばシドニー五輪代表の本山のように、
後半途中から相手DF陣をドリブルで切り裂くなどのスペシャルなスキルを持つ選手の不足。
候補で言えば松井、大久保、田中達也、家永、梅崎などがリザーブに入っていると後半の選手交代も
相手にとって脅威になるのでは?初戦で採用した、1トップ2シャドーでも有効に機能しそうな。

・個人技の差
サウジの前線、苦し紛れのクリアボールであってもきちんとキープできる巧さなどに唸らされる場面がしばしば。
日本ボール、サイドで1対1になったとき、解説者が「ここで勝負しても難しいですから」と当然のように語り、
違和感も感じず受け止めている自分にも驚き。

・サイドからのクロスの質
形は作るものの、クロスの精度が…。

・チェンジオブペース
横パスの連続から縦へのチャレンジングなパスなど、急激なスピードの変化をつける場面の少なさ。

・ゴール前でのフリーキック
日本の誇る武器を披露するべく、あえてファウルをもらいに行く工夫などがあっても良かったのでは。
鈴木隆行再招集?

フットボールはパスっていう芸術を魅せるためのものではなく、ゴールっていう現実を見せるべきもの。
このアジアカップを機に、個と組織が融合し、リアリズムに満ちたチーム作りが加速することを願います。
# by copamagazine | 2007-07-26 01:31 | NIPPON!

3連覇まで、あと2つ!

いよいよアジアカップも準決勝へ!
オーストラリアとの再戦を制し、次は難敵サウジアラビア。

準々決勝のウズベキスタン戦を見ましたが、とにかくスピードと縦への意識が強いのが特徴。
一瞬でゴール前へとボールが運ばれるスピード溢れるカウンターは日本のDF陣が苦手とするところ…敵陣に入ってからのチャレンジングな縦への早いパスと連動した2列目からの飛び出しも積極的。かなりの脅威となること間違い無し。
サウジアラビアとしては、2000年のアジアカップではグループリーグ、そして決勝と日本と対戦して2戦2敗しているだけに、タフな試合が予想されます。(アジアカップに楽な試合は無いけれども…)

過去のアジアカップでも苦戦となった準決勝。ここを制し、いざ決勝の舞台ジャカルタへ!
# by copamagazine | 2007-07-24 08:06 | NIPPON!

vol.07 発刊!

お待たせ致しました!
少し間が空いてしまいましたが、vol.07が発刊となり、先週末より順次配布を開始しています!

今号も盛りだくさんの内容なので、ぜひゲットして読んでみてくださいね!
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# by copamagazine | 2007-04-27 00:45 | A magazine editor

日本代表vsペルー代表~もたらした効果は、プラスのみにあらず。~

オシムは、明らかに怒りを露にしていた。怒りを通り越して呆れていたのかも知れない。
前日の記者会見時、俗に言う「海外組」中村俊、高原に関することに質問が集中したことに
対して、こう言い放った。
「彼ら2人のためにチームを作るか、それとも彼らの方がチームに適応しようと努力した方が
いいか、どちらがいいと思うか?」

質問の幼稚さについてはとりあえず触れないこととして、ペルー戦後の報道の在り方もまた
思わず閉口してしまうようなものだった。「中村俊が起点」「中村俊2アシスト」
「中村の素晴らしいキック精度が巻のゴールを生んだ」。
これは今にはじまったことではないが、あまりにも露骨過ぎる。オシムがマスコミに対して
鳴らす警笛にマスコミが気づく日は本当に来るのだろうか。

前置きが長くなったが、この日は実際にスタジアムまで足を運んでこの試合を観戦した。
ペルー側のゴール裏に腰を下ろした訳だが、驚いたのがペルーサポーターの多さと声援、
そして私がカイロを握り締めていたほど寒かったにもにかかわらず
上半身裸になって応援するほどのテンションである。釣られてこちらのテンションも少しずつ高まって来た。

キックオフを告げる主審の笛が吹かれ、いよいよテンションは最高潮に向かっていった。
だが、そのテンションは試合が進むに連れて下がっていった。

以前、横パスばかり回すだけの最終ラインが「各駅停車」と揶揄されたことがあったが、
この日は中盤4人がそれに近い状態だった。ただし、ここで言う「各駅停車」は
パスの回りではなく、4人の動きのことである。

遠藤、中村俊という足元でボールをもらってこそ力を発揮する選手を横に並べた時点から
懸念されていたが、前線への飛び出し、効果的なフリーランニングがほとんど見られなかった。
両者とも引いてボールをもらいに行く場面が目立ち、前線でのアクションが少ないため、
とりわけ攻撃は単発的なものになっていた。「タメを作る」と言えば聞こえが良いが、
後方から上がってくる選手がいないのでは何も意味がない。
サイド攻撃の際にはその「タメ」が上手くいっていたものの、結局それはチャンスへの
序章に過ぎず、フィニッシュへ向かう1つの過程にしかなりえない。
この日はゴールに直結するラストパスがあまりにも少なく、トライする姿勢もあまり伝わって来なかった。

そんな状況が前半ずっと続いていたわけだから、1-0で折り返したとはいえ、
その1点の内訳がセットプレーであることは至極全うなことであると言える。加えてミスが多く、中盤でボールを失うシーンも目に付いた。

後半に入り、日本に2点目("もちろん"セットプレーからの得点である)が
追加されてもその悪しき流れに変化が生じることはなかった。

だが、その悪しき流れに変化を生じさせたのは中村憲だった。デキが良いとは言えなかった
阿部に変わって投入されると、積極的にボールに絡み、小気味良くボールを
散らしていくことで停滞していた攻撃にリズムを与えていた。
中村憲投入により、攻撃の組み立てをボランチの位置から出来るようになったことで
中村俊もよりゴールに近い位置でプレーすることができ、高原のクロスに飛び込む
惜しいシーンもあった。

僅か15人という人数で来日し、コンディションも万全とは言えないペルー代表が終盤に
差し掛かったところで運動量が大幅に低下し、ほぼ無抵抗状態に陥ったことは当然だろう。
最後は家長、水野、藤本といった代表に初招集された選手を試す余裕も見せ、
結果的には2-0という危なげのない勝利を飾った。

試合後の記者会見で、オシムは「肉でも魚でもない試合」とこの試合を振り返って評した。
そして、同時に良かった部分として「若い3人の選手が入ってプレーのスピードが上がり、
ワンタッチプレーが多くなりアイディア、エスプリのきいたプレーが随所に見られた」ということを
口にした。もちろんペルーのコンディションも少なからぬ影響を及ぼしたはずだが、
若い3人が入った時には、中村、高原はピッチから姿を消していた。果たして、これをどう見るだろう。現段階で評するにはまだ早過ぎるが、この日に限って言えば2人がもたらした効果は決してプラスだけではなかったように思う。
                                               <編集タハラ>
# by copamagazine | 2007-03-26 08:24 | NIPPON!